【第1章】予定は未定⑧
2009 年 9 月 29 日 火曜日
屋上にいる三人を気にせずに、放課後の誰もいない階段を一気に下り、廊下を早足で駆ける。心拍数が増えるほどに頭の熱が増していく自分に気づいた時には『見附るい』なる人物がいる5組の前に立っていた。教室のドアを開けると、この学校は女子高かと思えるほどの女子女子女子で溢れていた。その華やかな教室の真ん中に『見附ルイ』はいた。
まるでハーレムかのごとく女の子を囲むその男は、軽薄なトークではあったが、その容姿は間違いなく王子であった。憎き相手であるはずなのに、男の自分でも惚れ込んでしまうようなやや蒼色の瞳と端正な顔立ちをしたヤツであった。『見附ルイ』はハーレムの中に乗り込んできた男に気づき、囲んでいた女の子と話していたどうでもいいような話をやめた。
「みんな~ごめんね~これからちょっっっっとあそこに立っているやつと用事があるんだよね~。話の続きはまた明日ってことで、またね~」
『見附ルイ』に促され、女の子たちはしぶしぶ教室を後にしていった。そして、軽やかにかばんを持って僕に近づくと、すれ違いざまに僕の耳元でささやいた。
「一緒に来て」
言われるがままに『見附ルイ』の後を黙ってついていった。学校の前の坂を下ったところにある公園に着いたころようやく『見附ルイ』は口を開いた。
「そこの自販で何か買うけど?いる?」
「それじゃコーヒー」
毒気を抜かれたというか、拍子抜けしたというか、『見附ルイ』のペースに乗せられてしまった自分に今頃気づいた。その頃にはあたりは既に真っ暗で公園の電燈だけが唯一の光源だった。その光に当たりながら、公園の椅子に腰を掛けた。もらったコーヒーのプルタブに指をかけた時に、「見附るい」は話し始めた。
「君が来るだろうと思って待っていたんだ。もうちょっと時間が掛かると思って、あのコ達に新しく仕入れた怪談話をしてたんだ・・・ああ、どうでもいいことだな。要件はわかっている。いろいろと聞きたいことがあるだろうから、まぁ、そうだな、君が自由に質問してくれればいい。僕はそれに答えよう。それでいい?」
そして、僕の今後を決定付ける5分間が始まった。
